「鎌倉文士」という言葉をご存知でしょうか。
鎌倉にはかつて多くの文豪たちが居を構え、互いに交流していたことから、文学のまちとして知られています。
鎌倉と言うと武士のイメージが強いですが、実は文学にも深い関わりがあり、関連するスポットもたくさんあります。
本記事では、鎌倉の文学に関連したスポットについてご紹介していきたいと思います。
鎌倉で文豪たちのロマンに触れる
武家政権の拠点として栄え、それとともに仏教も興隆した鎌倉ですが、実は「鎌倉文士」と呼ばれる文豪たちが集まる場所でもありました。
加賀百万石・前田家の洋館を利用した「鎌倉文学館」をはじめ、鎌倉には文学に関連したさまざまな観光スポットがあります。
悠久の歴史を感じる寺社や文学館など、文豪たちの息遣いを感じることができる鎌倉のまち並みをぜひ堪能してみてください。
さまざまなジャンルの文豪たちが集結した鎌倉のまち
鎌倉の文学のまちとしての萌芽は、明治の終わりごろのこと。
横須賀線が鎌倉へと延伸し、東京へアクセスが一気に便利になりました。
このころから別荘文化の発展とともに文豪たちも東京から移り住み始め、東京が壊滅的な被害を受けた関東大震災を機にさらに多くの作家たち鎌倉へと集まりました。
日本の近代文学の祖ともいえる夏目漱石、その弟子の芥川龍之介、流麗な文章で純文学の金字塔と言っても過言ではない泉鏡花、有島武郎・有島生馬・里見弴の白樺派の兄弟、高浜虚子や荻原朔太郎、中原中也、与謝野晶子といった俳人・詩人など、ジャンルや時代を超えて多くの文豪が執筆活動に勤しみ、互いに交流していました。
当時の彼らのエッセイを見ると、現代の私たちが驚いてしまうようなビッグネームたちが次々と登場する驚くべき文豪たちの交流の軌跡とともに、鎌倉のまちが活き活きと描き出されています。
鎌倉文庫と鎌倉文士
「鎌倉文士」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは戦時下を鎌倉で過ごした久米正雄と川端康成ではないでしょうか。
昭和初期に鎌倉へと移り住んだ久米正雄と白樺派の里見弴が中心となって発足した「鎌倉ペンクラブ」には、多くの文豪たちが名を連ねています。
久米発案の「鎌倉カーニバル」も夏の風物詩として大きな反響を呼んだそうです。
また、鎌倉に集まった文豪たちは、戦争によりひっ迫した人々の暮らしの一助になればと、貸本屋をはじめます。
自らも店番に立ったという川端康成は、自らのエッセイに「鎌倉文庫は悲惨な敗戦時に唯一つ開かれてゐた美しい心の窓であつたかと思ふ」と残しています。
戦時中に彼らが中心となってそうそうたるメンバーの蔵書を集めて開いた貸本屋は、戦後「鎌倉文庫」という出版社になり、東京に移されました。
戦後も多くの文筆家たちが鎌倉に居を構え、名作を世に送り出しました。
鎌倉の文学関連スポット
では、鎌倉の文学に関連したスポットについて見ていきましょう。
円覚寺
夏目礎石が円覚寺での座禅体験をもとに「門」を記したことで有名です。
漱石だけでなく、島崎藤村は「春」を、有島武郎は「或る女」の後編を書き上げ、川端康成の「千羽鶴」の舞台にもなっています。
建長寺宝珠院
「私小説の神様」とも呼ばれた葛西善蔵が一時期住んでいた場所。
葛西はここで関東大震災を体験し、「崖崩れの音、建物の倒れる音、人々の叫び声、とにかくこの世の騒ぎとは思われなかった」と「震災記」に記しています。
東慶寺
8代執権・北条時宗の妻である覚山志道尼が開いたお寺で、女性救済の縁切寺(駆け込み寺)として知られています。
高見順の「赤い芽 空をめざす小さな赤い手の群祈りと知らない祈りの姿は美しい」や、佐々木信綱の「雲に問へば雲はもだせり風にとへばかぜながれ去るいかにせましや」という詩碑が残っています。
鎌倉大仏(高徳院)
今でも鎌倉屈指の観光スポットとして知られる、巨大な鎌倉大仏。
与謝野晶子の「かまくらやみほとけなれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな」や、星野立子の「大佛の冬日は山に移りけり」の句碑が残されています。
鶴岡八幡宮
鎌倉のランドマークとしても知られる鶴岡八幡宮。
太宰治自身は鎌倉に住んだことはありませんが、彼が尊敬した芥川龍之介が住んでいたことから、憧れは持っていたようです。
彼は、最古の鎌倉文士ともいえる鎌倉幕府3代将軍にして「金槐和歌集」の歌人でもあった源実朝を主人公に「右大臣実朝」を執筆しています。
余談ですが、太宰は鶴岡八幡宮の裏の山で首つり自殺(未遂)をしているので、そういう意味では鎌倉文士の仲間に入っているのかもしれません。
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鎌倉文学館
加賀百万石を治めた前田藩の子孫が築いた洋館を利用したもの。
三島由紀夫の「春の雪」の舞台にもなっています。
現在は大規模改修のため休館しており、再開は令和11年ごろになるそうです。
まとめ
鎌倉の文学関連スポットをご紹介しました。
ぜひ文豪のロマンに浸る旅を楽しんでみてください。