天守が国宝に指定されている彦根城をはじめ、数多くの名城を有する滋賀県。
かつては近江国と呼ばれ、都が置かれていた京都に近く、琵琶湖の水運をフルに活用できる戦略的にとても重要な場所でした。
この地に築かれた城郭は実に1300もあると言われており、お城ファンからも大きな注目を集めています。
もちろんお城に詳しくないと言う方でも、観光地化されている場所や、自然豊かでハイキングを楽しめるような場所もあり、幅広い楽しみ方ができるお城が多いのも魅力のひとつです。
本記事では、滋賀県内にあるお城のなかでも、特におすすめの名城についていくつかご紹介していきたいと思います。
古くから交通の要衝として注目されてきた滋賀県
「近江を制する者は天下を制する」という言葉があったほど、戦乱の時代には非常に重要視されていた場所である滋賀県。
六角氏や浅井氏をはじめ、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など、名だたる武将たちにゆかりがあり、熾烈な争いが繰り広げられました。
都が置かれた京都への重要な足掛かりであり、当時物資輸送の主な手段であった水運においてキーポイントであった琵琶湖があったことなどから、交通の要衝として扱われていたのです。
そんな近江国には、古くから堅牢なお城が多く造られてきました。
滋賀県の名城
ここからは、滋賀県を代表するいくつかの名城について、時代順に見ていきたいと思います。
観音寺城
まずは、近江国の守護であった六角氏の居城・観音寺城から。
築城年代は明らかではありませんが、15世紀末から16世紀前半ごろの戦国時代黎明期に、六角高頼(たかより)が家臣である伊庭行隆、山内政綱(まさつな)らに命じて築かせたと言われています。
典型的な中世山城と言える形式で、山頂付近には本丸、平井丸、落合丸、池田丸などの遺構が残されており、旧中山道を見下ろす戦略的にも優れた立地のお城です。
地形を利用した秀逸な山城で、日本五大山城のひとつにも挙げられています。
小谷城
浅井氏が3代にわたって居城とした小谷城。
16世紀半ばに築城され、中世三大山城のひとつにも数えられています。
湖北を見下ろす東西の尾根につたって郭が設置されており、清水谷と呼ばれる場所に平素生活する居館が構えられていました。
織田信長の妹であるお市の方の嫁ぎ先としても知られており、最後の城主であった浅井長政は朝倉氏との板挟みの末、信長を裏切る道を選びます。
浅井氏は信長に滅ぼされてしまいますが、その攻城戦は決して容易なものではなく、小谷城の堅牢さを示しています。
安土城
「天下布武」を掲げ、天下統一に王手をかけた織田信長が3年かけて築いた安土城。
標高198メートルの安土山の地の利をフル活用した名城で、今日私たちがお城と聞いて思い浮かべるような天守閣を初めて設けたと言われています。
本能寺の変の際に信長の息子が燃やしてしまったため現在は石垣などの遺構のみが残されていますが、麓にある「滋賀県立安土城考古博物館」も含めて非常に見ごたえがあります。
さまざまな分野で時代の最先端を行った信長ですが、この安土城はまさにそれまでのお城の常識を覆した時代の先駆けとなったような時代を切り開いた城郭建築です。
長浜城
豊臣秀吉が織田信長の一家臣であった頃に築城した長浜城。
江戸時代前期には廃城になり、遺構は周辺のお城の建材に使われてしまっていますが、琵琶湖に面し、湖北の交通の要衝を抑えた名城であることが立地からわかります。
再建された天守の内部は歴史博物館になっており、長浜城や湖北地域の歴史についての展示がなされています。
ご当地ラーメンの「長浜ラーメン」や「黒壁スクエア」などもあり、周辺の観光スポットは若い世代からも人気を集めています。
八幡山城
豊臣秀吉の甥である秀次の居城であった八幡城。
金箔瓦が出土していることから、関白職を担う天下人の居城にふさわしい絢爛豪華なお城であったことがうかがえます。
秀吉から関白職を継ぎ、一時期は有力な後継者になっていましたが、秀吉に実子・秀頼が誕生してからは疎まれるようになり、悲劇的な最期を迎えました。
水郷地帯である近江八幡は観光地としても人気で、まち歩きはもちろん水堀の上から船に乗ってまちを眺める体験もおすすめです。
佐和山城
豊臣秀吉に仕えた石田三成の居城であったお城。
不破の関があった関ケ原の近くにある交通の要衝で、天下人の腹心にふさわしい居城であったと考えられます。
関ヶ原の戦いの敗者の居城であり、彦根城が築かれる際に廃城となったためあまり具体的な遺構は残されていませんが、城山を歩けば三成が見たであろうものと同じ景色を眺めることができます。
彦根城
関ヶ原の戦いの後、徳川家康に仕える井伊氏が築城したお城。
天守が現存する数少ないお城のひとつであり、国宝に指定されています。
20年の歳月をかけて築かれた堅牢な城郭は、譜代大名にふさわしい貫禄があります。
天守以外にもさまざまな建造物が残されており、周辺は観光地化されているので、お城にそれほど詳しくない方でも十分に観光を楽しむことができます。
まとめ
滋賀県内にある名城についていくつかご紹介しました。
古くから交通の要衝であり、戦略的に重要な場所とされてきた滋賀県。
県内にはご紹介した以外にもお城がたくさんあります。
ぜひ城跡を巡って当時の様子に思いを馳せてみてください。