加賀百万石のお膝元として、豊かな文化が育まれてきた金沢。
江戸時代が終わり、近代に入ってからも独自の華やかな文化が継承され、それは文学の政界にも反映されてきました。
金沢出身の作家のなかでも特に著名な泉鏡花、徳田秋声、室生犀星の3人は金沢三文豪と呼ばれ、県内にはゆかりの場所がいくつかあります。
石川県で文学に浸る旅を楽しみませんか。
本記事では、金沢三文豪を中心に、石川県内、とくに金沢で文学に触れることができる観光スポットをご紹介していきたいと思います。
文学のまち・金沢
さまざまな文学作品の舞台となった金沢。
金沢にゆかりのある作家のうち、特に著名な文学者である泉鏡花、徳田秋声、室生犀星の3人は金沢三文豪と呼ばれ、現在も多くの人々から愛され、読み継がれています。
石川県には金沢を中心に3人の足跡や文学の世界を感じることができる場所や、彼らが育った近代の金沢の様子やその時期の金沢の学生たちについて知ることができる場所があります。
金沢三文豪とゆかりの観光スポット
ここからは、金沢三文豪の作品や生涯について触れながら、おすすめの観光スポットについて見ていきたいと思います。
泉鏡花
まずは、幻想文学の名手として知られる泉鏡花(いずみきょうか)について見ていきましょう。
泉鏡花の代表作としてまず思い浮かぶのが「高野聖」。
高野山へ向かうとある僧侶と不思議な力を持つ美しいひとりの女との邂逅を描いた、非現実的なようでいて、どこか現実と地続きになっているかのような独特の雰囲気を持つ名作です。
尾崎紅葉に師事し、文壇のなかでも一目置かれるようになっていった泉はほかにも、「外科室」、「婦系図」など300以上の作品を残し、幼いころに亡くした母の面影を追いかけるようなロマンと幻想が作品の根底に感じられる作品を多く残しています。
泉鏡花の生涯や文学の世界に触れることができるのが「泉鏡花記念館」。
記念館に面する「新町・鏡花通り」の町並みや、「化鳥」の石碑がある「主計町茶屋街」、「義血侠血」の舞台となった「梅ノ橋」、「化鳥」「照葉狂言」の舞台となった「中の橋」など、周辺の泉鏡花ゆかりのスポットも巡ってみてください。
徳田秋声
泉鏡花と同じく尾崎紅葉に師事した徳田秋声(とくだしゅうせい)。
泉とはまた違った作風で、自然主義の作家として活躍しました。
金沢三文豪のなかでは取り上げられることが少ない印象ですが、ノーベル賞作家の川端康成をして「小説の名人」「日本の小説は源氏にはじまって西鶴に飛び、西鶴から秋聲に飛ぶ。」などと称されたほど優れた作家でした。
幻想的な雰囲気の作風である泉とは対照的に、庶民の生活に密着したリアルな描写に裏打ちされた、生き生きとなまめかしい女性たちが特徴。
当時は「東の廓(くるわ)」と呼ばれた花街・ひがし茶屋町の近くで生まれ育った徳田は、「縮図」「あらくれ」「黴(かび)」などの作品で知られ、揺れ動く男女の心の様子が巧みに表現されています。
彼の生涯や作品に触れることができる「徳田秋声記念館」とあわせて、ひがし茶屋町の散策も楽しんでください。
室生犀星
金沢三文豪のなかで最も若いのが室生犀星(むろうさいせい)。
作品の幅が広く、詩や小説を中心に、自伝的な作品が広く知られています。
詩集「抒情小曲集」に収められた「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」という一節にもあるように、室生は3人のなかでも特にふるさと・金沢への思い入れが深い作家。
ペンネームにもその1字が取られている犀川の上流には彼の文学碑があります。
生家跡に建つ「室生犀星記念館」のほか、養子に取られて育った場所である「千日山雨宝院」も室生の生涯や作品に触れることができる場所です。
「四高」と金沢文学
全国に5つしかなかった高等中学校のひとつである第四高等中学校・通称「四高」があった金沢。
金沢三文豪をはじめ、多くの優れた作家や作品を生み出してきました。
「四高」の建物を利用した「石川四高記念文化交流館」があり、無料で見学できる「石川四高記念館」と三文豪を中心に近現代の石川の文学に触れることができる「石川近代文学館」に分かれています。
現在は能登半島地震の影響で休館中ですが、「石川近代文学館」の方は別の施設でさまざまなイベントを開催しているそうなので、興味のある方はぜひ訪れてみてください。
金沢文芸館
昭和4年に建てられた銀行の建物を利用した金沢文芸館。
多方面で活躍する作家・五木寛之や地元を代表する文豪である泉鏡花の世界に触れたり、文芸的な交流ができる施設になっています。
昭和レトロな雰囲気を味わいつつ、石川県の文学に触れてみてください。
まとめ
金沢三文豪ゆかりの場所を中心に、石川県内で文学に触れることができる観光スポットについてご紹介しました。
華やかな文化が継承され、優秀な学生が集っていた近代の金沢。
優れた作家や文学作品が多く生み出され、現代においても人々に読み継がれています。
石川県を訪れる際にはぜひ文学にも触れてみてください。