石川県を代表する伝統工芸品である九谷焼。
江戸時代から続く歴史ある製法で作られた陶磁器で、華やかでありながら重厚感のある絵付けが印象的です。
土産物店で見かけることも多く、また製作体験ができる場所も増えています。
お土産選びや製作体験などの前に、できれば基礎知識を身に着けてから九谷焼に触れたいものです。
本記事では、九谷焼の歴史や基礎知識を、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。
石川県を代表する伝統工芸品・九谷焼
今や日本を代表する伝統工芸品となっている、石川県の九谷焼。
日本国内はもちろん海外からの評価も高く、宮内庁が贈答品として使用することもあり、イギリスのチャールズ皇太子御成婚祝として贈られたことがあるほど。
九谷焼において最も重要とされる絵付けにはさまざまな技法や様式があり、伝統的な技法や様式を踏襲しつつも、モダンで繊細なデザインが目を惹きます。
日常生活から贈り物まで、幅広く使うことができる焼き物です。
また、九谷焼には陶器と磁器の両方があり、質感や用途に応じて使い分けることができるのも魅力的。
ぽってりとしたようなフォルムで土の温かみがある陶器と、つるりとした光沢があり薄くて丈夫な磁器にはそれぞれ良さがあるので、実際に手に取って違いを楽しんでみてください。
九谷焼の歴史
では、九谷焼の歴史について見ていきましょう。
九谷焼の誕生は、江戸時代初期ごろまで遡ります。
加賀藩の支藩であった大聖寺藩内の九谷村と呼ばれる場所で発見された陶石を材料に磁器の生産が始まったことから、地名を取って「九谷焼」または「大聖寺焼」と呼ばれていました。
この最初期の九谷焼は「古九谷」と呼ばれ、その青手や色絵の美しい彩色は現在でも特に好まれています。
古九谷は誕生からわずか50~60年ほどで閉窯してしまい、次に九谷焼が復活したのは江戸時代後期ごろ。
細々と受け継いだ技術をもとにほかの地域の職人の協力も得つつ古九谷の再興が進んだこの時期の九谷焼は「再興九谷」と呼ばれ、加賀藩内の金沢や小松を中心に発展しました。
再興九谷に尽力した人物は多く、「吉田屋窯」、「宮本屋窯」、「松山窯」など、後の時代にも大きな影響を与えた窯元が次々と誕生します。
明治時代の開国により日本の伝統工芸品が万国博覧会などを通じて世界に広まるようになると、九谷焼もヨーロッパを中心に高く評価され、国際的な人気を得るようになりました。
海外での需要が高まると、金彩を多用したより華やかな絵付けも生まれ、さらに多様なデザインが登場してきます。
時代が現在に近づくと、九谷焼は「美術品」としての側面も重要視されるようになり、現代的でスタイリッシュな絵付けも見られるようになりました。
このように、九谷焼は古九谷をベースに伝統を大切に受け継ぎつつも、時代に合わせて多種多様な絵付けが生み出され続けているのです。
九谷焼の製法
ここで、九谷焼の製法について順番に見ていきたいと思います。
成形
陶石や陶土を乾燥させてふるいにかけ、不純物を取り除くなどの過程を経たものを粘土状にし、成形していきます。
素焼き
成形したものを天日干しにし、800度ほどの温度で素焼きします。
素焼きを行うことによって、強度を強めて下絵付けや釉薬がけの工程がしやすくなるそうです。
下絵付け
釉薬をかける前に、呉須(ごす)で下絵を描いていきます。
釉薬がけ
釉薬をかけて焼き上げることで、表面をガラス質で覆うことができ、強度が増し光沢が生まれます。
釉薬のかけ方にもさまざまな種類があり、器の個性を引き出します。
本焼き
1300度ほどの高温で長時間焼き上げる工程。
高温で焼くことで釉薬が溶け、表面がガラス質で覆われます。
上絵付け
色絵付けを行う工程。
九谷焼の工程のなかでも最も重要視されています。
錦窯
さいごに800度ほどの温度で焼き上げて完成です。
絵付け様式
九谷焼の絵付けにはさまざまな様式がありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介していきたいと思います。
青手
古九谷や再興九谷に多く見られる、緑色の絵の具が映える鮮やかな絵付け。
ほとんど余白なく色が敷き詰められており、国内のほかの陶磁器にはあまり見られない九谷焼ならではの独特な様式です。
色絵(五彩手)
「九谷五彩」と呼ばれる、緑・黄・紫・紺青・赤の色絵の具を用いて描かれる立体的な絵付けが特徴。
中国風の人物や山水画、動物など、絵画的で写実的な絵が多いです。
赤絵(金襴手)
滲みにくい赤色の絵の具で緻密な紋様を描く「細絵」が器全体に描かれている絵付け。
赤い絵の具の細かい書き込みと色鮮やかに絵付けされた部分とのコントラストが魅力です。
金を用いて絵付けされた赤絵は特に「金襴手」と呼ばれています。
まとめ
九谷焼の歴史や基礎知識についてご紹介しました。
伝統を大切に受け継ぎながら、時代のニーズに応じて柔軟に変化してきた九谷焼。
石川県を訪れた際には、ぜひ製作体験やお土産選びを通じて九谷焼に触れてみてください。